hacchi🐝の洋ドラ生活

あれやこれや感想もどきを勢いで書きまくるブログ

寺山修司『書を捨てよ、町へ出よう』

どういう経緯で買ったのか全然思い出せないのだけど、タイトルの通りサクッと読んでさっさと捨てようという軽薄な動機で買ったのは間違いなくて、それなのにいつまでも捨てられずいつまでも本棚の隅っこにわたしの軽薄な動機のオーラを維持したまま鎮座していて、たまに気が向いてパラパラめくってみると革命とか博打とか女とかパンクでロックな小話のあいだに何やら意味深な一文があってそこで手が止まって数秒間思考ロックにかかるが、やがて考えるのがめんどくさくなってぱたんと本を閉じて元の場所に戻すしかなくなり、次に開くころにはなぜ自分がこの本を捨てられないのか全く思い出せなくなっている、そんな本。

 

寺山修司『書を捨てよ、町へ出よう』

 

「何も起こらない」時代、ロマンスの欠乏。それはいわば、あす何が起こるかを知ってしまった人たちの絶望を意味している。「あす、何が起こるかわかっていたら、誰があすまで生きててやるもんですか!」という浪漫派的な感懐などは一足とびにとびこえて、サラリーマンたちには「停年まで何が起るか」わかってしまっているのである。

 現代怪談は、いわば、この無事平穏の「怖さ」を物語っている。

 

それを幸福と錯覚しながら、毎日毎日を同じように繰返してゆくうちに、「今日は昨日と同じだ。いや、待てよ。もしかすると今日はほんとうは昨日なのかもしれない」と思いこんでしまうような喪失。